【第十三話:軟石の採掘(割り出し)

 堀切りによる溝が掘り終わると、次は石の下に金矢(かなや)を打ち込む穴を「矢穴(やあな)ツル」で付けます。これを「矢穴」と言い、この穴に金矢を配置して打ち込むのですが、『矢穴3年』と言って、この矢穴を平行に開けられるようになるまで3年ほどかかりました。
 金矢を打ち込むハンマーの柄には、ヤチダモの枝を使いました。そうすると柄がしなるため、手がしびれずに済んだのです。


矢穴ツル


金矢


ハンマー

 金矢を打ち込むと、堀切りで溝を付けた縦3尺(約90p)横10尺(約3m)の範囲に割れが入ります。


割り出し(金矢打ち)

 これが『割り出し』で、割り出された軟石はその場でもう一度、およそ3切「1尺×1尺×3尺(約30p×30p×90p)」の大きさで金矢を表面に打ち込み、小割りしてから起こします。


小割り

 割り出し作業では、金矢のほんの少しの向き加減により、軟石の奥野方まで平行に割れないこともあり、真っ直ぐ綺麗に割るには経験と勘が必要で、『割り出し』『小割り』の作業は一番難しい作業でした。
 『堀切り』から作業を始めて『割り出し』の作業ができる一人前の石工になるまで5年以上かかりました。


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