【第十六話:軟石の採掘(よもやま話A)

 
 藻南公園の切羽をよく見るとの文字が刻まれているのを目にすることができますが、これはこの切羽を仕切っていた親方の屋号と思われます。他に「二号」「三号」「四号」の文字も見られます。この採掘場は軟石採掘が最も早くから行われていた場所であることを考えると、もしかすると百年前に刻まれたものかも知れません。
 また、その横に丸い穴が二つ並んで掘られていることにも気づきます。あれほど高い所に単なるイタズラかと思うでしょうが、これは第十二話で書いたように、軟石を切り出すには山の上にある火山灰を取り除き、何十年もかけて一段ずつ掘り下げていく内に絶壁のような高さになり、上部の軟石の亀裂した部分が剥離して落下してくる危険があるため、壁面に穴を開けて丸太を差し込み、生き埋めになるのを防いだ跡です。
 この藻南公園の切羽は手掘り時代を代表する採掘場で、その殆どに手掘り跡のツル目が見られます。



 また、ここには横穴式の洞窟が何箇所かありますが、これは第九話でも書きましたように、手掘り時代には軟石の採掘は冬期間において火山灰の撤去作業しか行うことができなかったため、冬期間でも採掘ができるようにするのと、火山灰の撤去作業を省くために作られた方式でしたが、石とは言え軟石ですから柔らかく、落盤事故が相次ぎ中止されました。
 崩落は今でもあり、立ち入り禁止です。


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