【第三十一話:軟石の建物⑥】

★森安ミシン商会
 (札幌市豊平区豊平4条1丁目)

 豊平橋の近くに、米穀商を営む高原きみ子さんが店舗として大正2年(1913)に建設した軟石造の建物があります。正面玄関には、きみ子さんの名にちなんだ丸に「き」の字の屋号が残っています。
 戦後まもなく森安ミシン商会がこの建物を借り受け、最近まで店舗兼工場として使用していましたが、建物が手狭になったことと石の重みで建物が変形し老朽化が進んだため、同商会が移転し現在は空店舗になっています。

森安ミシン商会
 正面両側には防火と装飾を兼ねた梲(うだつ)が設けられ、軟石造の重量感が伝わってくる建物です。
 今後引き取り先が決まらない場合は取り壊しも有り得るため、こういった歴史的建造物はなんとか保存していきたいものです。


★札幌市資料館(旧札幌控訴院~旧札幌高等裁判所)
 (札幌市中央区大通13丁目)

 札幌市の大通公園西端にある札幌市資料館は、大正15年(1926)に札幌控訴院として建設されました。外壁は札幌軟石を使用し、構造はレンガトコンクリートを組み合わせた特殊な工法が取り入れられています。
 建物正面は数多くの彫刻で装飾され、その中央に一際目に付く彫刻を見ることができます。目隠しした女神像は心の目が真実を見抜くことを意味し、この左右に彫られている天秤と剣は公平と正義を表し、鏡は真実を映すことを意味しています。
 これらの彫刻は名工と言われた山本新蔵が若干20歳のころ、わずか10日間で彫りあげたと言われています。


 
札幌市資料館(旧札幌控訴院)
 戦後は札幌高等裁判所となり、昭和45年(1970)に高等裁判所が別敷地に新築されたことで解体される運命でしたが、愛着を持つ市民が多いことから保存されることになり、昭和48年(1973)に札幌市資料館として歴史展示室に生まれ変わりました。


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