【第三十二話:軟石の建物F】


★郷土料理「杉の目本店」(旧加藤栄次郎宅蔵)
 (札幌市中央区南5条西5丁目)

 ススキノの一角に大正7年(1932)建設当時の札幌軟石の蔵をそのまま感じさせる建物が目に飛び込んできます。以前は質屋の保管庫であったものを、昭和38年(1963)に現在の郷土料理店として利用しています。(札幌にあって河豚料理が有名です)


杉の目本店(旧加藤栄次郎宅蔵)
 当時の軟石の蔵と木造部分のデザインが一体となったこの建物は、近代的な装飾を凝らしたコンクリート造の建物が軒を連ねるススキノの通りにあって、料理店として落ち着いた雰囲気を醸し出す建物となって、軟石造の蔵の良さを一段と建設当時以上に感じさせているのではないかと思います。蔵の正面壁に付けられている文字は建設当時の質屋だった頃の屋号でしょうか?
 ヘタな近代的装飾を凝らした建物をもってしても、この軟石造の重厚さには足元にも及びません。


★宮越屋珈琲豊平店(旧片山酒造店蔵)
 (札幌市豊平区豊平4条5丁目1−15)

 豊平通り(国道36号)から少し下がった場所に、札幌軟石を一部改修した喫茶店が建っています。
 建物は昭和2年(1927)に片山酒造店の蔵として建てられ、雑穀蔵・家財道具の収納などに利用されていた蔵で、近年まで料理店として復活し、現在は喫茶店として利用されています。外観は出入り口部分の改修・増築以外は建設当時の姿を維持しています。


 この建物も正面外壁に屋号が彫られている事で当時の蔵の特徴が残されています。このように大正から昭和初期に建てられた軟石造の蔵で残されているものは、有効利用されている建物も多くあり、コンクリートとガラスに覆われた建物が林立する都心においては、軟石造の建物は心を癒す役割とリニューアルされオールドファッションの希少価値的建物として珍重されます。



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